今はもう無い実家の母の部屋からは、大きな柿の木が見えました。
渋柿なので、人が食べることはありませんでしたが、熟した柿はカラスや小鳥たちには人気だったようです。
リッキーもその鳥を狙って木の上に駆け上がっていました。
勢いよく駆け上がって、でもお尻から爪を使って慎重におりてくる姿が対照的でした。
いつも母はリッキーが何かやらかすたびに、私の帰宅を待っていたかのように話はじめるのですが、その日は、特に楽しそうでした。
「今日はね、外で猫の鳴き叫ぶ声が聞こえてね。」
「何だろうと思っていたら、郵便配達のおじさんが『お宅の猫じゃありませんか?』って教えてくれてね。」
「慌てて外へ出たら、リッキーが柿の木のてっぺんでギャーギャー叫んでてね。」
「よく見たら木の下に野良猫がいてね。そんなに大きな猫じゃないと。
そして、その野良猫は『なんで騒いでるんだ?』って顔をして、すーっと歩いて行ってしまったとよ。」
「あとで、きまり悪そうに木から降りてきてね。何事もなかったように体をなめ始めてさ。本当に情けないよね。」一気にしゃべると、母は、また思い出して笑っていました。
リッキーが虹の橋を渡ってからもしばらくは、柿の木を見るたびに、今にも上から「ニャー」とあの懐かしい声が聞こえてきそうで、私はつい木のてっぺんを見上げていました。

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