小学生の夏休み、私と従姉と二人で10日ほど親戚の家へ遊びに行きました。
観光をして、ホテルに泊まり、服を買ってもらい、毎日が新鮮でした。
そして旅の終わり、大きな駅に着くと、それぞれ迎えが来ていました。
従姉のお母さんは、おしゃれで都会的な人でした。
母も、きっと私を迎えるために少しだけよそ行きの服を着て来ていたのだと思います。
弟の手をつないで、ホームで待っていました。
「おかえり。」
そう声を掛けられました。
でも私は、その声に返事をせず、そのまま前を向いて歩いてしまいました
10日間、都会でいろいろなものを見てきた私は、母の姿が、とても野暮ったく見えてしまったのです。
子どもながらに、「恥ずかしい。」そんな気持ちだったのだと思います。
大人になって、その話が出たとき、私は本当のことが言えませんでした。
でも、言えなかったのは、母を傷つけたくなかったからではありません。
もしかすると、母は気付いていたのかもしれません。
ただ、母が知ったとしてそれを悲しんだかというとちょっと違う気がします。
本当のことを言えなかったのは、大人になった私が、あの日の私を恥ずかしいと思っていたからなのです。

コメント